あたしは、ソファーに座ってただテレビを眺める。くだらない深夜番組。
 あの人はあたしの隣で、そのくだらない深夜番組を楽しそうに見ている。
 聞こえてくるのはテレビからの音声と、それから時々あの人の笑い声。
 くだらない深夜番組にすら、あたしは勝てない。あの人はあたしに見向きもしない。
 時計の針が進んでいく。
 いつまでこうして時間をつぶすの? ねぇ、こんなののどこが面白いの?
 そんな意味を込めて、あの人を見上げる。
 ほら、ねぇ、あたしを見て。ねぇ。

 リロリロリロ……。
 電子音。
 あの人は立ち上がり、机の上の携帯電話を持ち上げる。
 慣れた手つきでそれを操作し、メールを読む。
 あの人の口元がほころぶ。
 それが悔しい。
 あたしはあの人にそんな表情をさせたことがない。

 あたしは、あの人に近づき、甘えるように体をこすりつける。
 あの人は、あたしの方を見ずに、あたしの頭を撫でる。

 違うの、そうじゃなくて。あたしを見て。ねぇ、あたしをみて。

 深夜番組は、いつの間にか映画になっていた。きらびやかな衣装に身を包んだ女性が、笑っている。

 あの人は座り、あたしを膝の上に載せる。それから、携帯電話を耳に当てる。
「もしもし?」
 ああ、またあの女に電話しているのね。

 時計の針は、26時を指す。

 電話を終えたあの人は、テレビを消し、立ち上がる。

 あたしはその後を追いかける。

 布団に入ろうとするあの人に、精一杯アピールする。
 ねぇ、眠る前にあたしを見て。

「にゃ〜ご」

 あたしの鳴き声に、あの人はあたしを見る。あたしの頭を撫でて、笑う。

「おやすみ、チビ」
「みゃ〜」

 ああこれで、やっと眠れるわ。