Selfish princess

1.
慣れてるから平気。
お世辞だけを並べてご機嫌をとる人も、あたしの顔色だけうかがう人も。
みんなみんな、慣れてるから平気。
だって、あたしは姫だから。
一国の王女だから。
みんな、あたしのお金を気にしているだけだって事知ってるから。

2.
知ってるかい?あそこの姫は笑わないんだ。
愛想も何にもないやつだ
所詮、王族なんてその程度。
自分が金持ちであることを鼻にかけてるんだ。
とりあえず、ご機嫌をとることだけはするけどな。

3.
あたしがいつ、王族であることを鼻にかけた?
あたしを笑わせたいならば、楽しいことの一つでも言ってみろ。
それも出来ないくせに。
あたしのこと何も知らないくせに。
そんなにこの地位が欲しいのならば、望んで誰かにくれてやる。

4.
どうかしましたか、姫。
そのような暗いお顔をなされて。
わたくしめでよろしければ、ご相談に乗りますが。
欲しいモノでもございましたら、わたしくしがとってきますが。
ああ、我が姫。
そのような暗いお顔をなさらないで。
どうぞ、なんなりとお申しつけくださいませ。

5.
あなたもそうなの?
あなたもあたしの機嫌をとろうと思っているのね?
おあいにくさま。
モノでつられるほど子供じゃないわ。
あたしが何かを望めば、あなただって裏でこういうんでしょ?
あそこの姫は我儘なんだ、って。

6.
知ってるかい?あそこの姫は我儘なんだ。
この間、姫の護衛が旅だったろ?
あれは、姫があたしが欲しいのは星、なんていうからなんだ。
まったく、とんでもない我侭姫だ。
あんなのが王位についたらどうなることやら。

7.
なんてお人好しなの?
あたしの口から出任せを真に受けるなんて。
星なんて手にはいるわけないでしょ。
それぐらいあたしにだってわかってるわ。
そうね、あなたが本当に星を持ってきたら、笑ってあげてもいいかもね。

8.
あの騎士様が旅立ってから一年も経つじゃないか。
やっぱり、星をとりになんか行ってないんだろうな。
あの姫の我儘ぶりに愛想が尽きて、どこか遠くへ逃げ出したんだろ。 
大体、自分で仕組んでおきながら、あの姫はいうんだぜ?
今度の護衛は気に入らないってな。

9.
やっぱり、逃げ出したのかしら?
あたし、そんなに我儘だった?
後悔なんてしてないわ。
あたしにそういうつもりはなかったんだもの。
そうね、だけどちょっと残念だわ。
今度の護衛はかっこわるいし、つまらないんだもの。

10.
あの姫も、もうすぐ16。
そろそろ結婚する年だろ?
あんな我侭姫のもらいてなんているのかね?
国王陛下はさぞ、大変なことだろう。

11.
結婚なんてしてやらないわ。
国のため?
そんなのまっぴらごめんよ。
だって政略結婚でしょ?
あたしを必要ともしていない国のために、
どうしてあたしが犠牲にならなければならないの?
あたしはどうせ、我侭姫なの。

12.
国王陛下もやけになったものだな。
笑わない姫を笑わせた者に、姫と結婚する権利を与えるなんて。
我儘姫を笑わせられる者はいるのかね?
とりあえず、逆玉は狙えるがな。
どうだ、あんた、試してみる気はないのかい?

13.
くだらない。
あたしの愛想をとろうとする連中に、あたしが微笑むわけがないじゃない。
どうしてそんなことしなくちゃいけないのよ。
お父様も馬鹿ね。
そんなことしたって、結婚相手なんて現れないのに。

14.
お待たせいたしました、姫。
お望みのものを持って参りました。
長らくお待たせいたしました。
こちらは、流れ星の一部でございます。

15.
あなたってば、本当にお人好しね。
そんな何年も前のことを、律儀に守っていたなんて。
あれは冗談だったのに。
あたしはあなたのこと疑ったっていうのにね。
ああ、そうだった。
あなたが帰ってきたならば、笑ってやってもいいかなと思っていたんだ。

16.
なぁ、聞いたかい?
我儘姫が笑ったそうだ。
なんでも昔に姫の我儘をきいて星をとりにいった騎士様が帰ってきたらしい。
持ってたのは、流れ星……隕石の一部だと。
まったく、とんでもないくらいいい人だぜ。

17.
国中はあなたの噂で持ちきりよ?
我侭姫の我儘を、唯一きいた人だって。
今の心境はどうかしら?
他に望むものがないかですって?
そうね……。
そうだわ、今回のは簡単よ。
あのね……

18.
この上なき幸せでございます、姫。
わたくしのようなものでいいならば、一生涯姫のお手伝いをさせていただきます。
なぜならば、姫。
その願いは、わたくしのものと同じだからです。
姫のおそばにいられるなんて、ありがたき幸せ。

19.
あなたはやっぱりお人好しね。
あたしの我儘をまたきくなんて。
でも、あなたは見てて楽しいわ。
それにあなたは他の、あたしの顔色だけをうかがう奴らとは違うしね。
言ってみるものね、我儘も。

20.
おいおい、知ってるか?
我儘姫の縁談が決まったそうだ。
お相手はあの騎士様だと。
あの騎士様が一緒なら、とりあえず国は安全そうだな。
なんせ、あの我侭姫の我儘を、唯一きいた人なんだからな。

∞.
人々は噂を事実として認識するが、事実が真実である可能性は極めて低い。