彼女の渾名は「さいきょう」だ。
 その由来は、埼京線沿線に住んでいるから、と本人には言っている。
 実際には、彼女の氷のように冷たい言葉と、太陽のような明るい笑顔のギャップに翻弄されているからなんだけど。

「……ださ」
 彼女は、僕の渡したアイスクリームを一目みるなり言った。
「何、ストロベリーって。女のコはイチゴが好きだとか思ってんの? 夢見ちゃってんの? ばかじゃないの? てか馬鹿でしょう?」
 そこで何故か爆笑。
「アイスって言ったらチョコミントに決まってんでしょ? あんたアイスなめてんの!?」
 あんまりにも言われるから、僕が新しいのを買ってくるというと
「別に食べないなんて言ってないじゃない、もったいない」
 そういって僕から、ストロベリーのアイスを奪い取る。
 桜色の舌で、ピンク色のアイスを一口、
「つめた」
 としかめっ面。
「でも、まあまあ美味しいじゃない、ありがとう」
 そういって僕の方を向くと、笑った。

 これ、これですよ、皆さん!
 彼女は沢山僕を振り回すけど、すっげー冷たい目で見られるけど、最後には太陽のような明るい笑顔で「ありがと」「大好き」ってくるんだ。
 これを、「最強」または「最凶」と呼ばすになんと呼ぶ!

 パーフェクト過ぎる僕のカノジョ。
 渾名はさいきょう、本名は静菜、名前とは裏腹に静かじゃない子。高校二年生で、薙刀部。すらりとした長い足に、しらうおのような指先。腰まで伸びた黒い綺麗な髪の毛。
 痴漢が多い事で有名な埼京線沿線に住んでいて、痴漢を投げ飛ばした挙げ句、延々と説教をかまし、痴漢親父を泣かせた話は有名過ぎるぐらい有名だ。
 しっかり者だけど、ちょっとぬけてて、冷たいけど、お礼はちゃんと言う。
 なんてパーフェクトなんだ。本当。

 惜しむべきは、彼女が電脳世界の人間だってことだ。
 画面の向こうで、今日も彼女は太陽のような笑みを浮かべている。