中学のとき好きだった子は、頭のいい読書家だった。
 本が嫌いなのに図書委員になった私は、いつもドキドキしながら彼への貸出作業をしていた。
 偶然帰りが一緒になったとき「月が綺麗ですね」と彼が言った。
 とても綺麗な満月で、彼と一緒に見られたことが嬉しかった。今どうしてるかな

「月が綺麗ですね」


 中学のとき、クラスの男の子とたまたま帰りが一緒になったことがあった。
 その日は綺麗な満月で、彼は私の横で「月が綺麗ですね」と呟いた。丁度、国語の課題で夏目漱石について調べていた私は、思わず赤面した。
 恥ずかしくて、その後は避けて過ごしてしまったけれども、元気かしら?

「月が綺麗ですね」


 中学のとき、好きだった子がいた。私も彼も読書が好きで、話がよくあった。
 少し遅い時間に帰りが一緒になったことがある。満月の日だった。
「月が綺麗ですね」こともあろうに、彼はそう言った。幻滅した。
 どうせ言われるならば、二葉亭四迷の方が当時の私は好みだったからだ。

「月が綺麗ですね」


 中学のとき好きだった子は、ませていた。
 家が近いので、一緒に帰る機会を楽しみにしていた。
 その日は綺麗な満月で、なんとなくロマンチックな雰囲気にこっそり酔っていた。「月が綺麗ですね」と彼も言った。
 その意味がわかったのは結婚してから。ちょっとませ過ぎじゃありません、旦那様?


「月が綺麗ですね」



 中学のときに、好きな子と一緒に帰る機会があって、しかもそれが満月の日だったりしたから、ものすごくドキドキしたことを覚えている。
 少し赤みがかった綺麗な満月で、思わず「月が綺麗ですね」と話しかけた。
 彼女が少し照れくさそうに笑っていたの印象的だった。元気にしてるかな?

「月が綺麗ですね」


 中学のとき、割と遅い時間にクラスの子と一緒に帰る機会があった。
 その日は少し赤みがかった綺麗な満月で、思わず「月が綺麗ですね」と話しかけた。
 彼女は何故か真っ赤になった。
 その意味に気づいたのは大人になってから。そういう意味じゃなかったのに……。

「月が綺麗ですね」


 中学の時、文学少年を気取っていたという黒歴史がある。
 意味もよくわからないのに、夏目漱石を読む自分って格好いい! と思っていた。
 思ってもないのに、クラスの女子相手に「月が綺麗ですね」とか呟いてみたりしていた。意味は通じてなかったことが、唯一の救いである。

「月が綺麗ですね」


 中学のとき、割と遅い時間に女の子と一緒に帰る機会があった。
 その日は綺麗な満月で、思わず「月が綺麗ですね」と話しかけた。彼女も頷いた。
 その意味に気づいたのは大人になってから。
 ときめいてるとこ悪いけど、俺、中学の時、そんなに博識じゃなかったよ、奥さん。

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