"Now, here, you see, it takes all the running you can do, to keep in the same place.
If you want to get somewhere else, you must run at least twice as fast as that!"
『Through the Looking-Glass, and What Alice Found There』Lewis Carroll



「困っているじゃないですか。どうせ、悪口でしょう?」
設楽桜子(検察志望の大学生、ミス・ローヤー)
立ち止まっている暇など、どこにもない。私はそれを、知っている。



「桜子さんが言うことは正論で、全然間違ってないことが多いけど、
でも、言い方きついから気をつけたほうがいいよ? 損、してると思う」
志田葉平(大学生。桜子とは高校からの知り合い)
 そう、彼に高校のときに片思いをしていたなんて、そんなのきっと時間の無駄だったのだ。



「だって桜、あたしのこと嫌いでしょう?」
佐藤椿(ロリ服に身を包む大学生。学年トップ。椿姫)
 あんな馬鹿げた格好をした女にも私は勝てない。



「三年ぐらい働いたら寿退職」
工藤菊(葉平の恋人。桜子とは中学時代の同級生)
私は菊が嫌いだ。



「桜子ちゃん、俺と付き合おうよ」
新山当麻(大学生。先輩)
別に、新山さんの言葉に心が動かされたからじゃ、ない。




私が菊を嫌いなのは、菊のあの女の子女の子したところだ。
でも、世間はそう思ってくれるだろうか。
菊が、志田君のカノジョだから、とは思わないだろうか。
私は、それが怖い。
「あたしのことは、佐藤でもシュガーでも椿でも椿姫でも、お好きなように呼んでね」

「それが桜子さんのいいところだけどさ」



 ふわふわしてしまう。
 あの感覚は嫌いだ。


   ミス・ローヤー。まぁ、検事を目指している私としては有難く、受け取っておきたい称号だ。その意味が、法律好きの頭でっかち、結婚相手は六法全書、でも。

「まさかミス・ローヤー、そこまで空気が読めないわけじゃないよね?」

「あの人だけはこの服を褒めてくれたの」
今の私は、ありのままの私なのだろうか?




「桜、世間が反対しても自分が正義だと思う事をしなさい」

赤の女王と椿姫と私
5月3日(金)連載開始