私の話、聞いてくださるの?
 有難う。
 皆、私の話なんて聞いてくださらないのよ。
 少しばかり惚気になるけれどもよろしくって?
 そう、有難う御座います。それじゃぁ、お話しようかしら。

 私の彼ね、少しばかり我が儘なのよ。
 尤も其処が好いのだけれどもね。
 どういう風に?
 そうね、例えば……、私が他の男性と話していると怒るのよ。ヤキモチという奴よ。
 ええ、其れは嬉しいわ。
 あとね、私が作った料理が気に入らないと怒るわ。まったく、気まぐれな人なのよ。
 ええ。さっきまで食べたいと言っていた物を作っても、実際に出来上がってみると「こんなの食べたくない」って怒るの。
 仕様が無い人でしょう?
 子供なのよ。
 あとは、……まぁ色々よ。
 男の方は其れぐらいの方がいいって言うけれども、浮気も沢山していたわ。
 私が怒っても、あの人は逆に怒って殴りかかってくるから何も言わなかったけれども。
 何で別れなかったか?
 あら、だって貴方、あの人はその後に泣いて謝ってくれるのよ。きちんと詫びてくれるのだもの、どこに別れる必要があるの?
 え? ああ、この火傷?
 ええ、そうよ。
 煙草を押し付けられた痕。
 いいえ、全然気にしていないわ。
 彼のヤキモチ具合には困ったものよね。てんで、お子様なのですもの。

 でもね、もうこんなこと無くて済むのよ。
 そうでしょう?
 あの日もね、彼が他の女の人と腕を組んで歩いているのを見てしまったの。
 それだけならば良かったのだけれども……。
 ええ、そう。
 その女性は、私の妹だったわ。
 流石にあれは困ってしまったわ。
 だから、私は二人のあとをつけたのよ。
 何時から私の妹は、あんなはしたない娘になってしまったのかしら?
 嘆かわしいわね。
 でもね、もう、そんな事ないのよ。
 あの子はもう、これ以上恥を晒すことは無いのよ。
 ねぇ、そうでしょう?
 あの人もね……、あの人はね、あの人のせいで、妹はああなってしまったのよ。あの人が妹を誑かすから。
 妹は私と違って良い子なのに。
 あんな良い子他にはいないわ。私の自慢の妹だったのよ。
 それなのに、あの人が……。
 でもね、もうそんなことは無いわ。
 そうでしょう?

 あの人も、妹も、もう何も出来やしないわ。
 そうでしょう?
 妹はきちんと、あの子が大好きだったお庭に埋めたわ。
 ええ、そうよ。
 母の実家が在った所。
 妹はあそこが好きだったのよ。
 あの人?
 あの人は、さぁ? まだ見つかっていないのならば、未だにあの山奥にいるのかしら?
 あんな人、鴉の餌にでもなるのが相応しいのよ。
 そうでしょう?

 ……。
 ええ、そうよ。
 認めるわ、刑事さん。



 私が妹とあの人を殺したのよ。
 後悔なんてしていないわ。
 世界で一番可愛い妹と、世界で一番大好きなあの人と、私は永遠に私の物に出来たんですもの。
 「たった一つの冴えたやり方」と言う物ですわ。
 まぁ、私はSFは好みませんから、読んだ事はありませんけどね。