君は、まだ歌っているのかい?

牧師様。
ええ、だって、彼は私の歌が大好きなんですもの

そうだね、彼は君の歌がとても大好きだったね。

やだわ。だったなんて過去形じゃないわ、牧師様。
彼は私の歌が大好きなのよ。

そうだね、ごめん、ごめん。
さぁ、もう一度最初から歌ってくれ。

はい。

 *

ああ、やっぱり君の声は綺麗だね。

ありがとう。ねぇ、牧師様。
彼は一体いつになったら帰ってくるの? 彼からお手紙はこないの?

ああ、来ないんだよ。でもきっと、すぐに帰ってくるさ。

彼、迷子になっちゃったのかしら? だって、あまりにも遅すぎるわ。

どうだろう。そうかもしれないね。

わかったわ、牧師様。私、彼が迷わないように歌うわ。
私の歌声が届いたら、彼はきっとちゃんと帰ってくるわ。

そうだね、それがいい。
それじゃ、私は少し席を外すが、ここで大人しくしているんだよ

はい、牧師様。

 *

君はまだ謳っているのかい?
恋人は生きていると、謳うのかい?
私はまだ謳わせるのかい?
壊れかけた少女に、恋人は生きていると謳わせるのかい?
まだ足りない?
まだ足りない。
ああ、でも、どちらにしろ偽善にしか過ぎないのだ。
歌えばいい、
ずっと、
恋の歌を。
歌えばいい、
ずっと、
鎮魂歌を。
謳えばいい。
そうすれば、少なくとも、


彼女はずっとここにいるのだから。