――いつも一人で生きてきたみたいな顔しているけれども、人間はそんなこと出来ないんだ

 うるさいうるさいうるさいうるさい。

――人を拒絶して何が得られた?

 もういいじゃない、放っておいてよ

――心配だから放っておけないんだよ、って言ってなかったっけ?

 何よ何よ、何よ! あたしを捨てたくせに。

――だって、化け物じゃないか

 知ってるわよ、そんなこと。

――人殺し

 うるさい。大体それは、あんたのことでしょう?

――現実から目をそらして楽しいかい?

 黙っててよ。

――いやだね、だったら君が黙ればいい。

 何を言っているのよ。あたしがいないと存在すら保てないくせに。

――だから、君の体を有効利用してあげようと提案しているんじゃないか。

 いやよ。この体はあたしのものだわ。

――へぇ、じゃぁまだ生きていくつもりがあったんだ。

 ……そうよ。

――へぇ、それはあの少年?

 彼に何かしたらただじゃおかない。

――君に何か出来るかな? お望みなら、彼の記憶を抹消してもいいんだよ。

 やめてよ。もういい加減にしてよ。消えてよ。この体も記憶も全部あたしの物なのよ。あんたなんかに、

――じゃぁ、試してみようか。記憶や体がどちらを選ぶか。

 ……いいわよ。

――……。ほら、こちらの勝ちだ。

 何を言って……

――記憶も体もわたしが喰らった。君には欠片も残っていないよ。それじゃぁ、君自身も

 ……冗談、やめてよ、

――本気だよ。じゃぁな、“大道寺 沙耶”




「っ」
 飛び起きる。
 ああ、夢か。
 呼吸を整える。
「渡すものですか」
 肩を強く握りながら、あたしの中の敵へそう呟いた。